1.調弦について | 2.目線について | 3.指のストレッチ1 | 4.指の訓練1 | 5.指の訓練2 |
6.音符の不思議 | 7.コードについて1 | 8.スラーについて | 9.ヴィブラート | 10.メトロノーム |
1.調弦について(1)
さあ、ギターを弾く前の準備だ。音合わせしてごらん。???? おいおい、音あわせを機械(チューナー、調弦機)でやっとるのか? 便利な時代じゃのう。しかし、その便利さゆえに君の耳は鍛えられんのじゃ。何でも機械に頼ってはいけない。そうだな、5弦だけ機械で合わせて、残りの弦は自分の耳で合わせるんじゃ。最後に確認でチューナーを使うのがいいじゃろう。機械まかせにならないように気を付けよう。
2.目線について
君はギターを弾く時どこを見て弾いているんじゃ?音符を見て、左手を見て、そんで右手を見て確認かあ……安全第一主義じゃのう。じゃあたとえば車の運転はどこを見て走るんじゃ? 「道路」じゃろ? ハンドル見たり、クラッチやアクセルを見ていたら危なくて走れん。「道路」はギターで言えば「音符」、「目線は音符」が基本じゃ。君がギターを弾いて2年目だから言ってるのじゃが…。
上手に弾いている人の目線をよく見るといい。演奏中は左手を見ているようじゃが、せいぜい6弦のあたりしか見えないのじゃ。自分の指先は見えないんじゃよ。押さえたり、弾いたりする指の感覚は「見ない」と鍛えられるのじゃ。
ピアノも鍵盤から目線を外せるようになってからぐんと伸びる。そして、ギターのフォームは指が見えないくらいの構えが楽なんじゃ。ここが初心者のきついところでもあるのじゃがね。音符を見て弾くということは「音符がよく読める」ことにも繋がっておるのじゃ。そういえばパソコンのキーボードも同じじゃなあ。指を見ないと早くなる。何、君はパソコンで仕事をしておるのか?それじゃあギターは軽い軽い!
3.指のストレッチ(1)
ギターは指を使って弾くもんじゃから、指は堅いより柔らかい方がいいに決まっとる。だが、指が堅くてうまく弾けないことを知らない人が多いんじゃ。君はどうかな? 「手と手を合わせてシアワセー」みたいに左右の手をぴったり合わせてごらん。そしたら指の付け根の関節からググッと後ろに反らせるんじゃ。左右の指は離れんようにして手の平だけ離していくんじゃよ。このとき左右の手の甲がどのくらい拝んでいるかじゃ。手の甲が一直線上に並べば合格。60度程度ならあと一息。30度くらいなら相当なストレッチをしなけりゃならん。これがひとつ。
そして今度は左手の小指じゃ。手は離してよい。先ほどと同じように指の付け根の関節から小指だけググッと後ろに反らせるのじゃ。手の甲と90度位たてば合格。あとは先ほどと同じ基準じゃ。左手の小指は日常では陰の存在だが、ギター演奏に於いては他の指と同等、あるいはそれ以上の動きを強いられるもんじゃ。ぜひストレッチして指をやわらかくすることじゃな。
そうそう、あんまり急に無茶なストレッチをすると指の筋を痛めるから、徐々に、しかしやや痛いくらいのストレッチを日常の癖にしよう。きっと演奏が楽になるはずじゃ。
4.指の訓練(1)
ギターの練習は、ギターを弾くということだけではないんじゃ。ギターを持たずとも日常しなければならない指の訓練がある。前回の指のストレッチもその一つ。更に筋を強くしたり、神経を鍛える練習をしなければならない。まず左手からじゃ。
左手は弦を押すという基本動作が中心になる。従ってさまざまなフォームに対応できる指を作るんじゃ。まず左指をパーにして隣の指と指がくっついている状態を作る。次に人差し指と中指を真横に開いてみる。これができん人はいないはずじゃ。これを(1)としよう。
また指を閉じて今度は中指と薬指をできるだけ大きく真横に開く。おやあ、開きが足りんぞ!目一杯開くんじゃ。他の指が開いてはいかん。このフォームを(2)とする。
また指を閉じて、今度は薬指と小指を開く、これも目いっぱい開くんじゃ。このフォームを(3)としよう。
全体の練習は(1)(2)(3)(2)という流れになる。この4拍子のリズムを幾度となく繰り返すうちにギターの弾きやすい指が出来上がるんじゃ。まったくできないからといって止めてはいかん。必ず誰でもできるようになる。通勤中でもできるいい練習なんじゃよ。
5.指の訓練(2)
今度は右指の訓練じゃ。右手は指の間を開くという動きはほとんど無く、手の中に指をしまう、指を出すという縦の動きが基本になる。手の平を上にして全部の指をまっすぐにして開いてごらん。その指を小指から順に手の中に関節を内側に折りたたんでいくんじゃ。最後はグーになる。今度は小指から順に指を開いていく。最後はパーになるはずじゃ。これを連続動作でやると、指のてっぺんがサインカーブを描くようになる。
その昔、夏木マリという歌手が“絹の靴下”というのを歌っておって、歌の最後にくねくねと艶かしく指を動かすんじゃが、あの動きじゃ!(知ってる人は年寄りかな?)これだけで終わってはいけない。今度は逆の動作、すなわち人差し指から小指の順に手の中にしまい、その順に開いていく。できるだけ早くスムーズに行うことが大切なんじゃ。これだけで君のアルペジオやトレモロは一段と輝きを増すんじゃ。しっかりやってくれたまえ!
6.音符の不思議(1)
「塾長、どうも変なんです」
「唐突にどうしたんじゃ?」
「音符なんです」
「音符がどうかしたかな?」
「付点四分音符は1拍半ですよね」
「そうじゃよ、ただし4分の何拍子という拍子記号の場合じゃがね」
「はい、それは知っていますが…。1拍半というのは2より短い長さで、2の手前ですよね」
「その通りじゃ」
「なのに1拍目に出てくる付点四分音符は2拍目を過ぎるんです」
「そうじゃな」
「これって何か変じゃないですか」
「ははー、君はいい事に気づいたようじゃな。音楽の拍というのはスタート時点をさすんじゃ。4拍子の1・2・3・4という拍はそれぞれがスタート時点じゃから、たとえば2拍目の時点でようやく1という長さが理解されるんじゃ。音符も同じで、その音符がいくつの長さであるかは、次に出てくる音符や休符までは理解できないはずなのじゃ」
「はい」
「定規でいうと、0から1センチまでの部分を取ったようなものじゃ。何せスタート時点は1なんじゃから…」
「あ、そうか。そうすると1拍半は確かに2と3の真中までの長さになりますね」
「そういうことじゃ、これは意外と勘違いすることが多いんじゃよ。絶対量と相対量の勘違いと言ってもいい」
「よくわかりました」
7.コードについて(1)
「塾長、CとかAmとはコードのことですよね」
「そうじゃよ」
「僕はギターでいろんな音楽をやりたいのですが、コードがさっぱりわからなくて困っているんです。町で売っているコードブックを買って調べることはありますが、ぜんぜん身につかないんです」
「ははあ、君はコードを覚えることは“コードフォームを覚える”事と思っているようじゃね」
「違うんですか?」
「大いに違うんじゃ、コードとは“和音”のこと、“和”とは複数のこと。複数の音の積み重ねが“和音=コード”じゃから、その和音が何の音のかたまりでできているかが大切なんじゃ」
「Cがドミソの集まりというのだけは知っています」
「じゃあそれぞれの音の名前は知っておるかね?」
「ドがルートだったかな、後は忘れました」
「ミはドから数えて3番目だから3rd(サード)、ソはドから数えて5番目だから5th(フィフス)。」
「わかりました。でも何か面倒なんです。フォームを覚えるのほうが楽に思うんですけど…」
「フォームは大切じゃよ。でもそれだけではだめなんじゃ」
「なぜですか?」
「たとえばさっきのCというコードはギターではいくつくらいのフォームがあると思うかね?」
「僕は2種類くらいなら覚えてますが…いくつあるんですか?」
「大雑把には5つのフォームがあり、そのバリエーションがそれぞれ4から5種類くらいあるからまあ20から25種類くらいあるんじゃ。」
「そ、そんなにぃ?とても覚えられないや、ありがとうございました。ではでは…」
「これこれ、ちょいと待ちなさい。きみはせっかちじゃなあ。わしも全部覚えているわけじゃないんじゃよ」
「え?」
「コードというはさっき言ったようにその構成音が重要で、それさえ知っていればフォームを覚えずとも済むんじゃよ」
「本当ですか?」
「普段のエチュードなりギター曲なりの練習で、今弾いている個所が何のコードで書いているかを考える習慣がつけばいいんじゃ」
「え?塾長はいつもコードを考えて弾いているんですか?」
「そうじゃよ、もう50年もそうしておる。ソルの月光の第3小節目はFシャープセブンスとかね」
「すげえなあ」
「馴れなんじゃ。普段コードを考える習慣を作ること」
「わかりました。できるだけやさしい作品から考えてみることにします」
8.スラーについて(1)
ギターの基礎技術の一つに「スラー」がある。連続した2つの音で、あとの音が最初の音より高ければ上昇スラー、低ければ下降スラーといわれている。どちらも左手で音を出す技術じゃ。上昇スラーは指が弦を叩くことによって音を出し、下降スラーは左指が右手の変わりに弦を弾く技術というのは、ギターを始めて程なく出てくる課題じゃな。エレキギターでは上昇スラーを“ハンマーリング・オン(hammering on)”、下降スラーを“プリング・オフ(pulling off)”というのも周知のところじゃろう。
さてさて、今回特に協調したいのは下降スラーのことじゃ。どういうわけか、日本人の下降スラーは力が無い。最初に出す音と比較してスラー音が貧弱なんじゃ。これはなぜかというに、弦をスラーした左指が下の弦に指が止まっていないからなんじゃなあ…。右手にアポヤンドとアルアイレがあるように、左手にもスラーの際のアポヤンドとアルアイレがあるんじゃ。
練習は当然2つともやらなくてはならないが、特にアポヤンドの練習が足りんように思う。対して外人の有名ギタリストはほとんどがアポヤンドのスラーを使っているんじゃ。右手のアポヤンド奏法の注意事項の一つ、弾き終えた指がタッチするとなりの弦が鳴りつづく場合は使用できない、という原則がある。左手のアポヤンドにも同様の注意が必要じゃ。しかしそれ以外のスラーは大いに使うべきと考えようじゃないか!きっとメリハリの利いたいいスラー音になるじゃろう。
9.ヴィブラートについて
弦楽器や管楽器・歌は音を振るわせる「ヴィブラート」をかけることができるのは常識と思う。それじゃあ「ヴィブラート」とは物理的にどういうものかというと、正確に答えられない人が意外に多いんじゃ。
そもそも「音」には基本的な三要素、すなわち「高低」「強弱」「長短」がある。更に「音色」までを含めて四要素ということもあるんじゃが、これらの中で「ヴィブラート」をかける要素はどれだと思うかね?一般には「高低」の変化でかけるのが常識じゃが、中には“ヴィブラフォン”のように「強弱」でかけるものもある。え?ヴィブラフォンて何だっけって?ほら、鉄琴の下に筒が付いていて電気スイッチを入れると筒の中に付いている円盤が縦にくるくる回る楽器じゃよ!円盤が水平になって筒をふさぐと音量が弱くなり、垂直になると強くなる仕組みなんじゃ。ヴィブラートが掛かるから“ヴィブラフォン”じゃな。
実はこの方法はギターでも可能なんじゃ。ギターのコードをジャーンと鳴らしたら左手はそのままにして右手でボディを持ち、ギター本体を下に向けたり正面に向けたりを繰り返すと音が震える(やっている人は少ないかもしれないがね)。しかし一般に「ヴィブラート」は音の「高低」の微妙な変化でかけるのが普通じゃな。
さて、ここで実験をしてみよう。1弦の9・10・11・12フレットに左指の1・2・3・4をそれぞれ全部乗せてみる。左指はあまり力まずにな。これで1弦を弾くと普通の「ミ」がでる。この状態を仮に(A)としよう。
今度は全部の左指がフレットを押さえている状態で糸巻き方向にグッと弦を引っ張るように力をいれて1弦を弾いてみよう。「ミ」という音がどう変化したかな?(A)のときより音が浮ついているじゃろう。この音は実際、弦のテンションを上げているわけじゃから、当然高くなっているんじゃ。この状態を(B)とし、(A)(B)を繰り返すと音の違いが聞き取れるはずじゃ。
次に左4本の指がブリッジ方向に弦のテンションを緩めるように押し込んで弾いてみる。すると今度はやや低めの「ミ」の音になる。この状態を(C)としよう。やはり(A)(C)を繰り返すと音の変化した感じがよく分かるんじゃ。4本指全体の力で弦のテンションを変化させたので、音の変化もはっきりと聞き取れたじゃろう。
次に人差し指を外して同じことをすれば、力が弱まった分音の変化も小さくなる。同様に中指・薬指と1本ずつ指を減らしていけば最後は小指だけになり、普通によく演奏される程よいヴィヴラートをかけることになる。一般には(B)(C)という連続動作でかけるものじゃな。
このヴィブラートは弦に沿った「横の動き」でかけたわけじゃ。この他指を弦に垂直に指を動かしてテンションを変える「縦の動き」のヴィブラートもある。ローポジションでのヴィブラートは元々テンションが強いので「縦の動き」を使う。一流のギタリストはコードを押さえながらメロディを受け持つ小指だけ「縦の動き」のヴィブラートをかけたりするんじゃ。エレキギターの“チョーキング”(英語ではベンディング)などは音程を変えるまでテンションをあげる「縦の動き」というわけじゃね。いずれにしてもヴィブラートとは弦のテンションの変化による音高の変化ということじゃ。弦の魅力を引き出すためにもぜひ練習しておくれ!
10.メトロノームについて
拍を正確に刻んでくれるメトロノームは1812年にオランダのヴィンケルが振り子式のテンポ測定器を発明し、1816年にドイツ人のメルツェルがぜんまい式のメトロノームを発明した。メトロノームは1分間に打つ拍数をあらわすから、たとえば四分音符=60とあれば四分音符の速さはちょうど1秒間隔になり、120とあれば1秒で2拍を刻むことになるわけじゃ。メルツェルのメトロノームという意味で「M.M.○○音符=60」のように書き表したりするんじゃ。
この指示をはじめて楽譜に書いたのはかの有名なヴェートーベン[1770-1827]なんじゃよ。そういえばヴェートーベンは晩年難聴に悩まされるんじゃが、そのとき使っていた補聴器は発明家メルツェルの作ったものだったそうじゃ。今日のメトロノームは電気の発信音によるものが主流かも知れないが、それぞれに一長一短がある。ぜんまい式は見易さという点では最高じゃろう。欠点は音量調整できないこと、ぜんまいの持ち時間が少ないこと、最高速度は200程度まで、など。電気式はこの長短を逆にしたと思えばよい。君のリズム感を養うためにもぜひ上手に有効に使っておくれ!
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